2月、カーニバルで熱くなるSCATENIAMO IN CARNEVALE A FEBBRAIO
オレンジ投げ合戦が見もののイヴレアは必見DA NON PERDERE LA BATTAGLIA D’ARANCIA D’’IVREA
12月にナターレ(クリスマス)、そしてカポダンノ(正月)という一年のビッグイベントを終えたイタリアは、年明けから4月までの間にエピファニア(主顕節)、カルネバーレ(謝肉祭)、フェスタ・デラ・ドンナ(女性の日)、そしてパスクワ(復活祭)と全国規模のお祭りが目白押しだ。だいたいみんな宗教イベントなのだが、それぞれのイベントにそれぞれの伝統菓子や伝統料理があって楽しい。ただし調子に乗ってすき放題食べていると、春の訪れと共に厳しいダイエットをする羽目になる。
そんな一連のイベントの中でも、やっぱり一番賑やかで派手なのがカルネバーレだ。ところで英語で「カーニバル」というと、日本人はなんとなく“踊り狂って練り歩くパレード”をイメージしていませんか。100%間違いではないけれど、それが全てでもない。本来カトリックには復活祭の46日前(四旬節)から断食をする習わしがあり、じゃあその「肉食断ち」の前に、ご馳走いっぱい食べとこうよ、仮装なんかもして騒いじゃおうよ、ということで生まれたのがカーニバルなのだ。なるほど、イタリア語でカルネバーレというのは、もともとラテン語の「Carneカルネ=肉 Valeバーレ=さらば」から来ているそうだ。
さて、イタリアのカルネバーレのお祭りは、各都市で個性的なイベントが繰り広げられる。共通しているのは歴史装束の仮装行列だが、まず有名なのはヴェネチアのカルネバーレだ。怪しげな仮面と仮装をした人々と街の様子はテレビなどでもよく紹介されている。それから派手な山車が呼び物のトスカーナ州ヴィアレッジョのカルネバーレも、今やヨーロッパ三大カルネバーレなんて呼ばれるようになった。
一方ピエモンテ州北部の街イヴレアのカルネバーレは、オレンジ投げ合戦で盛り上がる。昔の装束に身を包んだ街の人たちが貴族チームと庶民チームに分かれて500トンものオレンジをぶつけ合う戦いは、観戦している観光客をも興奮の渦に包み込む熱い熱いイベントだ。終わった後は街中がオレンジの香りに包まれ、人も石畳もオレンジまみれ。オレンジと言えば、シーキューブでもオレンジを使ったケーキを発売している。ケーキを投げ合うわけにはいかないが、オレンジのケーキを食べながら、イタリアのカーニバルの話で盛り上がるのもいいかも。
イタリアのカーニバルで食べるお菓子は、揚げ菓子がメイン。ミラノ周辺ではキアッケレ、トリノあたりではブジエと呼ばれる小麦粉の生地を薄く伸ばして揚げて砂糖をまぶしたものや、フリッテッレと呼ばれる揚げ衣にフルーツを混ぜ込んだものやクリームを詰めたものなど、どっしりとしたものが多い。断食する前に、できるだけご馳走を食べたいという食いしん坊な欲望は、敬虔なクリスチャンもそうでない人も、みな平等にあるようだ。
文・宮本さやか フード・ジャーナリスト/イタリア トリノ在住