オンラインショップ シーキューブとは 店舗案内 商品一覧 お知らせ シーキューブ シーキューブ

Vol.3 復活祭とチョコレート

復活祭とチョコレートPasqua e l’uovo di Pasqua

春の訪れと共にやってくる幸せな休日La festa che arriva insieme alla primavera

3月はクリスマスの次にイタリアでお菓子が売れる季節だ。なぜならイタリア人にとってクリスマスの次に大切な祭日「復活祭」がやってくるからだ。
復活祭、イタリア語ではパスクワという。なぜ復活祭かというと、十字架にかけられて死んだイエスの復活を祝う日だから、だそうだ。復活祭がいつかというのは、「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」と決められていて毎年、日にちが変更するので、ややこしくて覚えられないのだが、だいたい3月後半から4月中旬までの一日。長いヨーロッパの冬がようやく終わり、春の一日をご馳走を食べながら家族で過ごすのだ。
キリストが人類の罪のために自らを犠牲にしたことを象徴するアニェッロ(子羊)、生命や復活のシンボルである卵を使ったご馳走がテーブルに並ぶ。子羊はローストに、卵の方はゆで卵をまるごと、サラミやチーズと一緒にパンに埋め込んだ「カザティエッロ」とか、半割にしたゆで卵の黄身を取りのぞき、その黄身に思い思いのものを混ぜ、再び元の窪みに詰めた「ウォーボ・ソード・リピエーノ」などなど。
デザートにはコロンバ。鳩という意味のこのケーキは、クリスマスに食べるパネットーネと生地も味もほとんど同じなのだが、平和を象徴する鳩の形をしていておめでたいということで、イタリアのパスクワには欠かせない。好きな人はパネットーネの時と同じく、パスクワの何日も前から朝食に、おやつに食べて楽しむ。やっぱりパネットーネと同じように、パスティッチェリアの上質なコロンバは、この時期の贈答品やプレゼントとしても活躍する。
しかし、パスクワのプレゼントの主役といえば、やっぱり卵型のチョコレートだ。この時期、トリノのパスティッチェリアでは、チョコレート職人たちが腕によりをかけて作った美しいチョコレートの卵たちがショーウィンドウを飾る。手のひらサイズのものから高さ1メートルぐらいはありそうな大きなものまで、砂糖細工で飾られた美しいチョコレートたちだ。この美しいチョコレートの中には、「ソルプレーザ」といって、なにかプレゼントが入っているのが決まり。最初から入れてある既製品もあるが、ちょっとお金に余裕のある人なら、たとえば恋人にプレゼントするための指輪を買ってチョコレート屋さんへ行き、その指輪を中に入れたチョコレート卵を作ってもらうという仕組み。パスクワの正餐のテーブルで、高級ショコラティエのチョコレートを割ってみたら素敵な指輪がでてきてうっとり、そんなラブラブなパスクワを過ごす人もいるだろう。
さて、復活祭の翌日は「パスクエッタ」、直訳すると小さなパスクワ、といって友達や親戚等、好きな人たちで集まってピクニックやバーベキューなどをするというのがイタリアの習慣。春の一日をアウトドアで楽しく過ごす。この日で冬は終わり、イタリア人のハートは一気に夏のバカンスへ向けてエンジン始動するのである。














文・宮本さやか フード・ジャーナリスト/イタリア トリノ在住