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Vol.32 イタリアの夏ごはん

イタリアの夏ごはん

La pappa estiva alla italiana
朝ごはん
暑い夏をイタリア人はどう乗り切るか?
Come fanno a sopravvivere la calda estate gli italiani?
イタリアの夏はけっこう暑い。ただし暑いといっても湿気が少ないので、日陰や家の中に入ればスッと涼しく過ごしやすいし、熱帯夜なんてものもほとんどない。あ~日本に比べてなんて過ごしやすいの?と思うのは東京の殺人的な暑さの中で一ヶ月ほど里帰りしてきた私だけ。当のイタリア人たちは、それなりに暑がっていて、それなりの暑さ対策をとっている。
暑さ対策の一番目は、「暑い時間はお昼寝。働いたり遊んだりするのは早朝と夕方以降の涼しい時間にいたしましょう」というもの。意外なことに早起きで働き者が多いイタリアでは、朝は7時や8時頃から仕事をするし、海のバカンスでも早朝からビーチに繰り出す人は少なくない。そのかわり、昼の12時から4時ごろの日差しが強烈な時間帯には、家に帰ってランチ&お昼寝。ちなみにミラノやトリノあたりの北部イタリアの一般家庭にはクーラーなどほとんどないけれど、厚い石の壁に包まれた建物は冷んやり涼しくて、お昼寝に支障がない。クーラーなしでは昼寝なんて絶対無理の日本の暑さでは、この技はあまり参考になりませんね。
というわけで、暑さ対策その2は「お料理はできるだけ火を使わず、もしくはスピーディーに加熱して、家の中が熱くなるのを防ぎましょう」だ。火を使わない夏の料理の代表選手と言えば、モッツァレッラチーズとトマトをスライスし、バジルを添えただけの「カプレーゼ」。タンパク質に乳脂肪たっぷりのジューシーなモッツァレッラと、真っ赤に熟した甘くて酸っぱくて香り高いトマトをするりと喉に流し込めば、暑さなんてなんのその。ここにおいしいパンとオリーブオイル、上等の塩、そして好きな飲み物があれば、どうです、火を使わずして素敵なランチが完成するというわけです。
カプレーゼ
ミラノ名物のブレザオラ(牛肉で作ったハムのようなもの)を大きなお皿いっぱいに並べ広げ、その上に刻んだ山盛りのルッコラをのせ、レモンとオリーブオイルであえたものも、すっきりした酸味と肉の旨味、ルッコラの苦みのハーモニーが食欲をそそる一皿。
そしてピエモンテ名物「カルネ・クルーダ」は、最上等の牛肉を包丁でミンチ状に叩く、または薄くスライスして、レモンとオリーブオイル、塩で調味したという、究極の加熱ゼロクッキング。ここにセロリと、大きく削ったパルミジャーノチーズを合わせるのが伝統的なレシピ。脂肪の少ない上等な肉の甘みにチーズとセロリの風味がぴったりとマッチして、それは食欲をかき立てるおいしさだ。日本では生肉が禁止になったそうなのでお薦めするのもどうかと思うが、湿気が少なくて食中毒が起きにくいイタリアではお刺身よりも生肉のほうがポピュラーというわけだ。
一方、火は使うけど、ほんのちょっとだけよ、の究極メニューは「インサラータ・ディ・パスタ」(パスタのサラダ)。パスタを茹でるのと一緒に刻んだインゲン豆やズッキーニを茹でる。加熱時間約10分のみ。茹であがったパスタとインゲン豆の水気を切ったらボウルなどに入れ、ツナ、サイコロ状に切ったモッツァレッラチーズやモルタデッラハム、プチトマト、コーン、オリーブ、刻んだピクルス類などを好みで加え、あればちぎったバジリコの葉っぱなども加え、これまたオリーブオイル、塩、コショウ、レモンなどであえるだけ。栄養のバランスもよく、カラフルで見た目もおいしそう。冷めてもおいしいのでお弁当にも最適、と歴代のイタリア主婦たちから絶大な支持を得続けている。同じようにして「インサラータ・ディ・リーゾ」(お米のサラダ)を作ることもできるが、お米の加熱時間はパスタの約2倍になるので、悪しからず。
インサラータ・ディ・パスタ
文・宮本さやか フード・ジャーナリスト/イタリア トリノ在住