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Vol.41 イタリアのランチタイム

イタリアのランチタイム

Ora di pranzo alla italiana


お昼寝付きだったら最高!

Pranzo con sonnellino sarebbe massimo!
イタリアのランチタイムの話をしようとすると、驚くほどたくさんの人から 「ああ、2時間も3時間ものんびり、 たっぷり食べるんでしょ? シエスタなんかしてね」と言われることがとても多い。 おいおい、シエスタはスペインの習慣だぜセニョール(セニョールもスペイン語。イタリア語はシニョーレ→男性を指す言葉)と 心の中でちょっと毒づきながら、ただ黙ってにっこり笑う私は、優しい仮面をかぶった嫌な奴。

シエスタとは言わないけれど、イタリアでも確かに昔は(もしかしたら今でも、一部ののんびりした地方あたりでは)、 お昼ご飯を食べたらのんびりお昼寝をしてから午後の仕事にとりかかる(もしくは、これにて本日の営業終了ということも!!) なんてこともあったようだけど、現代のイタリアでは平日にのんびりたっぷり昼ご飯を食べる人なんてほとんどいなくて、 社会人なら1時間前後のお昼休みに、ささっと食べるのが普通。

何をどこで食べるかと言うと、近所のバールでお手軽に済ますというのが圧倒的。

ご存知パニーノからトラメッズィーニ (パニーノは丸い小型や長型のパンを切って何かを挟んだもの。

トラメッズィーニは日本で言うところのサンドイッチ)、 またはトーストとイタリア人たちが呼ぶハムとチーズを挟んだホットサンドをさっと食べるか、インサラトーネ(大きなサラダ。 野菜だけでなくモッツァレラチーズ、ツナ、ゆで卵、オリーブ等が盛りだくさんに入って結構なボリューム)やピアット・カルド (温かい皿。ちゃんと食器に盛られたパスタとか肉、野菜料理をチンしてもらって食べる)などをその日の気分で。 

パニーノと水、コーヒーなら5ユーロ前後、ピアット・カルドを選んでも10ユーロ以内で収まってエコノミーなのだが、 最近は不景気の影響で、「前菜とパスタ、コーヒー付きで7ユーロ!」「一皿料理に飲み物付きで5ユーロ!」なんていう看板もよく見かける。 

競争の激化で値段は下がり、質が向上するのは消費者にとっては嬉しい限りだ。

そうそう、お手軽ランチの代表選手に「切り売りピッツァ」もある。 ピッツェリアでちゃんと食べるピッツァと違い、フォカッチャに近い柔らかい生地にいろいろな具をのせて焼いたものだ。 

切り売りピッツァの専門スタンドがイタリア各地の町のあちこちにあって 、油の染みない紙に包んだピッツァをパクツキながら歩く人をよく見かける。

安くておいしいランチといえば、最近は「ガストロノミア」も大流行中。 

ガストロノミアとはもともとお総菜店という意味で、 お金持ちの奥様のキッチン代わりのような存在。 

ゴージャスでパーティー料理みたいなお惣菜や高級チーズ、ハム類がすごい値段で売られている。 先日も、原稿が立て込んでいて、 夕食作るのめんどくさいなあ、時間ないなあ、と思いながら歩いていたら、美味しそうなお総菜店の前を通りかかった。 

お腹もすいていたので、ついふら~りと足を踏み入れてしまった。

娘と私、二人前ならたかが知れているよねと、 うっかり値段も見ないで買ってしまったらなんと!  50ユーロもかかってしまったのだ。

買ったのはラザニア一人前、 パエリア一人前、人参のサラダ2人前、ケーキ一切れだけ! こんな値段払うんならレストランに行けたよね、 と娘と二人ため息をついたのも後の祭り。

一方、最近流行のガストロノミアはヘルシーな野菜たっぷりの各種サラダやおかず類、玄米や全粒粉を使ったプリモ類、 砂糖や卵を使わないデザート等を売りにしているようなところも多く、しかもその場で食べることができて安い!トリノの中心街にある私のお気に入りの一軒は、一皿に好きなだけ、好きな種類を盛ってもらって6ユーロ!水をつけても7ユーロだ。

「セロリと牛肉とオレンジのサラダ 松の実入り」とか「春の葉野菜入り玄米のリゾット」なんていう具合に、 メニューもヘルシー&おしゃれ(ただし持ち帰りにすると、少し割高になるので要注意!)。

ヘルシー&おしゃれなエコノミー系もお金持ちのキッチン代わり系も、どちらも「ガストロノミア」なので、 まずは外から様子をうかがってみることが大切だ。

ヘルシー&エコノミー系は、大抵イートインスペースがあるのが目印。 

イタリア旅行中の野菜不足解消にもおすすめです。

さて、冒頭で、現代のイタリアではランチの後にのんびりお昼寝なんかする人はいません、と書いたけれど、 それは普通時のことで、これがバカンスとなると事情は全く違ってくる。

休み中でもセカセカと移動したり、 何かアクティビティをしていないと気が済まない日本人と違い、一カ所に長期(一ヶ月とか!)滞在型のバカンスを好むイタリア人たちは、 朝ビーチで泳ぎ、昼に家に戻ってランチ、午睡をたっぷりとってリフレッシュしたら、夕方からまだビーチで遊ぶ、 というような一日の過ごし方をする人が多い。

そんなバカンスをするために一年間頑張って働くというのがイタリア人の人生観。 

だから食べた後はお昼寝したいんだ、というのが本音なんだと思う。

文・宮本さやか フード・ジャーナリスト/イタリア トリノ在住