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Vol.44 イタリアの夏ごはん その2

イタリアの夏ごはん その2

La pappa estiva alla italiana N.2



「切って盛るだけ」

Solo tagliarli e sistemarli
イタリアの夏は、と一言でいっても最北端のアオスタは北海道みたいにすっきりさわやか、日差しは強いけれど湿気がなくて過ごしやすい避暑地気候だし、最南端のパンテレリア(シチリアの離島)は、もともとはアフリカの一部だったものが地殻変動でアフリカから離れてイタリアの領土となっただけあって、アフリカ並みの暑さに違いない。

だから私が語るイタリアの夏は、私の暮らすピエモンテと、その周辺の話が中心なのだけれど、さらっとした空気にカラッとした日差しが本当に気持ちがいい。

ところが最近の異常気象の影響か、時々熱帯夜みたいな寝苦しい夜や、大気が湿気をじっとり含んで呼吸が苦しいような日が時々ある。

ま、日本のあの眠れない夜に比べたら、赤ちゃんみたいなものなんだけどね。

そんなふうに暑い日は、イタリア人たちは暑い、暑いと大騒ぎ。そんな時は何を食べようか、というのが昨年(Vol.32)に引き続いて今回のお話である。

なにせ基本的にはそんなに暑くないので、クーラーというものが普及していない。

話が少しそれるけれど、古い街並を保存しているイタリアでは、築100年、200年なんていう建物に住んでいることもわりあい普通で(中は現代風に改築してある)、そういう建物は壁が50センチぐらい厚いのでクーラーの室外機を設置するための穴が空けられない(物理的に&歴史的建造物に手を加えてはいけないという法律のせい)。

これがクーラーが普及しなかった一因らしい。もっと話をそらすと、夏場にはクローズする映画館が多い。え? なんで?? イタリアに来たばかりの頃の私の頭の中も?でいっぱいだったのだが、よく聞いてみると映画館にクーラー設備がないからだとわかった。

それからもう17年もたっているのに、先日古い映画館の前を通ったら、やっぱりクローズになっていた。


こういうイタリアだから、暑い日に、クーラーのないキッチンで火を使って料理をするのはとても辛い。そこで人気なのが「カプレーゼ」を代表とする、「切って盛るだけ」料理だ、というのはVol.32でも書いた通り。カプレーゼは日本でも人気の、モッツァレラチーズとトマトのスライスを盛り合わせた一皿だが、実は日本のみなさんも、そして当のイタリア人も意外と知らないのがモッツァレラの脂肪分、カロリーの高さだ。

100gあたりのモッツレッラの脂肪分は牛乳製のもので16.1g、カロリーは243kcal。
水牛製になると脂肪分はなんと18.3g、カロリー240kcalだ。モッツレッラの塊は1個100gではすまないので、おいしいおいしいと気軽に食べているとすごいことになる。

あっさりさわやか感が似ているお豆腐とは大違いなのだ(木綿でも72kcal、脂質4.2g)。

その点、切って盛るだけな上にカロリーも控えめ、サラダ感覚で食べられるおすすめ料理が「パンツァネッラ」だ。これは古くて固くなったパンを利用して作るトスカーナの伝統料理。

今では夏のあっさり料理としてイタリア全国的に人気がある。

作り方はとても簡単。 

材料は
①古く固くなったトスカーナパン。
→日本ではトスカーナパンを手に入れるのは面倒だと思うので、普通のフランスパンなどで代用。できるだけ身の詰まったパンのほうがおいしいかも。 買ったらビニール系の袋から外して空気にさらしておけば、1~2日で固くなるはず。急いでいる時は、固くなくてもなんとかなるかも。

作り方
①の振りかける水を少なめに調整して。
②トマト、キュウリ、赤タマネギ
③オリーブオイル 塩、コショウ、白ワインビネガー。

作り方は
①パンは外側の皮を切り取り、バットなどに並べてお酢を加えた水で湿らす。
ここで大事なのは、ビショビショにして、パンをぐにょぐにょにし過ぎないこと。
あくまでも「湿っているけれどパンの食感はあり」という感じで。お酢の量は好み。
酸っぱいのが好きな人はたっぷりと。これを適当な大きさにちぎり、サラダボウルに入れる。

②キュウリはスライス、トマトは適当なサイズの角切り(またはプチトマトなら半割りとか)、赤タマネギは薄くスライスして、ここでも白ワインビネガーを加えた水にしばらくさらしておく。

これらも①のボウルに全部入れる。

③バジリコ、オリーブも加えたら、オリーブオイル、塩,コショウで味を整え、冷蔵庫にしばらくおいてからいただきまーす。

写真は私が家で作って食べているパンツァネッラ。
トスカーナパンでなく、全粒粉のパンを使って栄養補給。黒オリーブを入れるとさらにおいしく、子供に食べさせる時には人参なども入れて栄養満点にしちゃいます。

文・宮本さやか フード・ジャーナリスト/イタリア トリノ在住