イタリアのバレンタインデーGiorno di San Valentino alla Italiana
男性から女性へ、イタリア流プレゼント術。I regali romantici degli innamorati.
イタリアのバレンタインデーは、別名「Festa degli innamoratiフェスタ・デッリ・インナモラーティ=恋人たちの日」とも呼ばれているけれど、日本のように女性が告白する日、とか女性が周囲の男性に日頃の感謝を表す(?)日という認識はなく、恋人たちが互いの愛を確認し合う日、ということになっている。
由来はローマ帝国時代に遡る。妻や子供が故郷に待っていると、兵士たちの士気が著しく低下したことから、兵士の結婚が禁じられた。その禁を犯し、キリスト教司祭のヴァレンティヌス(バレンタイン)は秘密裏に兵士を結婚させていた。が、ある時、それがばれて捉えられ、処刑されてしまう。それが2月14日だったことから、聖ヴァレンティヌスの日=セント・バレンタイン・デーになったという説が一般的だ。
さて、現代の恋人たち(夫婦も含む)はバレンタインデーにプレゼントという手段を使って愛を確認し合うのだが、女が強く、男が尽くす国イタリアでは、プレゼントはもっぱら男性から女性へ、というケースがほとんどだ。
プレゼントは基本的になんでもありだが、代表的なのはやっぱり花。20代以下の若い女の子たちは「エー、花? ダサー」などと不埒なことを言って、物や食べ物のほうを喜ぶ花より団子傾向なのは日本と同じだけれど、大人の女性なら花をもらって悪い気はしない。で、どんな花が人気かといえば、やっぱりバラ。バレンタインだけに、愛と情熱を表す真っ赤なバラがダントツ人気だけれど、大事なのは色よりも渡し方だ。
イタリアでは日頃から、ピザ屋やトラットリアなどお手軽系の飲食店で食事をしていると、店に勝手に入ってきては、カップルのテーブルへ赤いバラの花を売り歩く外国人を見かけるのだが、その手の人から一輪買って「君の美しさとは比べモノにならないけれど♡」なーんて言うのは、いくらイタリアでもセンスの古ーいチョイ悪オヤジだけ。普通のまっとうなセンスのある男女であれば、センスのいい花屋さんでセンスのいいバラのブーケ、ということになる。そんな時は送る人の好きな色で統一したり、ブーケの中にチョコレートや指輪を潜ませる、なんて技を使ったり。そういえば、シーキューブのバレンタインテーマも今年はバラだとか。
ところでイタリアではバレンタインに女性側からプレゼントをしないということに加えて、日本と大きく違う点がもう一つある。それは既婚男性でも妻にちゃんとプレゼントをするということ。その陰に愛人がいようがそんなことは別問題。仕事帰りに妻のお気に入りのプレゼント、または花束を抱えて帰宅するというのが、やっぱりアモーレの国イタリアの正しい男性なのである。ある友人の話では、その日は仕事を休んで妻に尽くすというツワモノもいるという。そこまでされたいかどうかは別として、やっぱりイタリアだなあ、と感心してしまう2月14日なのでした。
文・宮本さやか フード・ジャーナリスト/イタリア トリノ在住