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Vol.37 リンゴのフリッテッレ

リンゴのフリッテッレ

Frittelle di mele



冬のスペシャルおやつ

Dolce speciale d' inverno

ヨーロッパの人はリンゴが大好きで、本当によく食べる。

映画なんかでも学生がお弁当代わりに食べているとか、恋人同士が一つのリンゴをかじっているとか、そんなシーンをよく見るような気がする。

イタリアもそんなリンゴ好きは同じで、子供のおやつや食後のデザート、お菓子、そして時には料理の材料として、リンゴが大活躍する。

穿った見方をすれば、日本ほど流通システムが発達していなくて、たとえば冬の今の時期なら、必ず手に入るフルーツと言ったらリンゴとオレンジぐらいしかないからだ、という言い方もできるかもしれない。

でも、そんなひねくれた考えをしたりして私が悪うございました、と反省したのが先日スーパーマーケットへ行ってリンゴ売り場をじっくり眺めてみた時だ。

5メートルほどの長さの一つの棚全部がリンゴで埋まっているのだ。

そしてそこには日本でも御馴染みのゴールデン・デリシャスから、ジョナゴールドとかガーラといった国際品種、それからピエモンテ名産のレネッタ、そして世界中で大人気という日本のフジが並んでいる。

イタリアでリンゴと言えば、北東部にある特別自治州のトレンティーノ・アルト・アディジェ州が有名。

特に北部のアルト・アディジェでは、イタリア国内産リンゴの50%、95万トンを年間で生産するそうで、当然のことながらリンゴを使った名物もたくさんある。

リンゴジュース、リンゴジャム、リンゴワインetc….中でもリンゴのストゥルーデルはとても有名だし、寒い季節のホットリンゴジュースなんかも郷土の人気者だ。

おや、ちょっと待って。ストゥルーデルはオーストリアのお菓子ですよ、とスイーツ通の読者の皆様はお思いになられたんじゃありませんか? 

はい、それも正解です。

でも、第一次世界大戦までアルト・アディジェはオーストリアの領土だったため、現在でも公用語はイタリア語とドイツ語で、人々もイタリア人というよりドイツ人に似た体型、顔かたちの人が多い。

だからアルト・アディジェがイタリアになった今も、オーストリア時代から食べ続けているリンゴのストゥルーデルが健在なのである。

ところでストゥルーデルの陰に隠れてとても地味ではあるけれど、一般の家庭のマンマ、もしくはノンナ手作りのおやつとして俄然人気があるのが「フリッテッレ・ディ・メーレ=リンゴのフリッテッレ」だ。

リンゴに甘い衣をつけて揚げたこのフリッテッレは、カーニバルシーズンの家庭のおやつとして、全イタリア的に人気がある。

衣がフニャフニャと甘く、その中に甘酸っぱいリンゴが隠れているドーナツみたいなもの。各家庭で、それぞれ秘蔵のレシピがあるのだが、私は皮をむいて芯をくり抜き、小麦粉160g、卵2個、牛乳200cc、砂糖30g、塩ひとつまみで作った衣をつけて揚げてみた。

卵は卵白だけ後で泡立てろと、伝統的なレシピ集に書いてあったのでその通りにしたら、ベーキングパウダーを入れずともふんわりとドーナツ状に揚がった。

熱々のところにグラニュー糖をまぶして食べると、甘くて酸っぱい温かい味がお腹の中にすいすい入っていく。

本場アルト・アディジェではゴールデン・デリシャスを使うのが一般的みたいだが、ピエモンテのおばあさんたちは、地元名産のレネッタという、一見梨のような外見をしたリンゴを使う。

試しに両方使ってみたのだが、レネッタのほうが甘味と強烈な酸味があって、揚げたときにそれが引き立つような感じがしたのは、私の身体が半分ピエモンテ人になりかけているせいだろうか? 

文・宮本さやか フード・ジャーナリスト/イタリア トリノ在