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Vol.53 ストリートフード流行中

ストリートフード流行中

Street Food in Voga





イタリアのストリートフードとは?
Quali sono Street Food Italiano?



イタリアでもここのところストリートフードが大流行中。街のあちこちにそれ系のお店がどんどん増えているし、雑誌やテレビなどでも盛んに「ストリートフード」をとりあげている。そしてついには、かのレストランガイド『ガンベロロッソ』から、ストリートフードだけのガイドブックまで登場した。

イタリアのストリートフードって何? といえば、まず思いつくのは切り売りピッツァ。普通のピッツァはピッツェリアで座って食べる、例の大きな丸い形のやつだけど、切り売りのそれは、切り売り専門の店で売っている。テーブルぐらい大きく焼かれたものを「これぐらい?」「いや、もうちょっと大きく、はじっこのカリカリしたところを入れてよ」なーんて言って切ってもらい、紙に包んでもらって歩き食いするのだ。外で食べるのが大好きなイタリア人達は、今の季節はもちろん、冬の寒い時期でも歩きながら、公園のベンチで、どこでもかしこでも切り売りピッツァにむしゃぶりついている。


ストリートフードについて詳しいあるジャーナリスト氏によれば、ストリートフードとは「ストリートで作ってストリートで食べるもの」だそうだ。たとえば日本なら焼き鳥とかたこ焼きとか?だからハンバーガーなんかは手軽に歩きながらストリートで食べることはできるけど、厨房で作られるから違うんだそうだ。そういう意味で言うと、切り売りのピッツァも違うということになってしまうのかな。


じゃあ、本物のイタリアンストリートフードとは何か。たとえばフィレンツェの「ランプレドットのパニーノ」。屋台の巨大な鍋でグツグツ煮上げたトリッパを、したたる汁ごとパンにさっと挟んで作ってくれるから、これぞ正真正銘のストリートフードだ。


それからここ数年人気上昇中の「ピアディーナ」。これはエミリア・ロマーニャ州の伝統料理で、クレープ状に焼いた生地にハムやチーズや野菜、またはヌテッラなどの甘いものを好きに巻き込んで食べるというもの。クレープとの違いは生地にバターや卵が入っていないから、もっとニュートラルな味なんだけど小麦粉の香ばしさが魅力的というところ。お昼でもおやつにでもOKだから、ここのところトリノでも雨後のタケノコのようにピアディーナ屋が増えている。






そして私が大好きなファリナータも、リグーリア州はジェノバ生まれのストリートフードの一つ。ひよこ豆を粉にひいたものと水、オリーブオイル、塩だけで作った生地を薄い鉄板に流し入れて焼いただけの質素な食べ物。でも外側はカリッと塩味がきいていて、中はお豆がとろりと甘い。あのおいしさは、ちょっとないおいしさである。ただ、シンプルなだけに難しいのか、本当においしいのはまれで、でもだからこそ本物に出会った時は嬉しくて、いつまでも忘れられない味になるのだ。


シチリアのご飯コロッケ「アランチーニ」やナポリの揚げピザ「ピッツァ・フリッタ」など、イタリアには美味しいストリートフードがまだまだたくさんある。そう考えると、高いお金を払ってレストランに行かずとも幸せになれる、イタリアっていい国だなあ、と思えてくる。


ストリートフード流行の陰には世界的な不景気があるといわれている。たしかにそうかもしれないけれど、今まで知らなかったまた別のイタリアのおいしさを発見できたら、それはとても楽しいこと。ポジティブでいれば何か必ずいいことがあるのだ。





文・宮本さやか フード・ジャーナリスト/イタリア トリノ在住