イタリア式誕生日の過ごし方Festa di Compleanno alla Italiana
タンティ・アグーリー・アー・テー!Tanti auguri a te!
イタリア人の誕生日の過ごし方で、一番特徴的だな、と思うのが、パーティーをした場合に主役が、つまり誕生日を祝ってもらう側が祝う側におごるというシステムだ。えー? 誕生日なのになんで自分でおごらないといけないのさー、とイタリア初心者だったころの私は、その理不尽さによく腹を立てたものだ。しかし日が経つにつれ、おや、このシステム、よく考えてみるとそんなに変じゃないかも、と考える余裕ができた。変じゃないというのは、家で誕生パーティーを開いた場合を考えてみればよくわかる。本人、または家族がご馳走を用意して、友人知人を招待する。これは全然あたりまえで、イタリアではそれが外食の場合でも適用されるというだけのことなのだ。だけどやっぱり、レストランやピッツェリアで誕生会をして、自分のお財布が軽くなると言うのはいかがなものかなあ、と思ってしまうのは私だけであろうか? いくらプレゼントをもらえるといっても、自分の好きなものを必ずしももらえるわけでもないしなあ。すみません、ケチで。
さて、この原稿の締め切り数日前に、イタリア人の、大人の誕生パーティーに呼ばれる機会があった。ラッキー、これで原稿の取材ができるし、写真は撮れるしということで、さっそく行ってみた。
当人は50歳男性。主催者はその奥さん。いい大人だから毎年パーティーをしているわけではないけれど、50歳という人生の節目だから、ちょっとパーティーなんかしてみようか、と企画されたらしい。招待客は約30名。学生時代の友達、幼なじみ、仕事仲間とその子供たちなど、いろいろな人たちが雑多に集まった中に、兄弟や従兄弟、そして年取ったお母さんもしっかり参加しているところは、いかにもイタリアな感じ。もちろん料理上手な奥さん手作りのおつまみの数々に混ざって、マンマ手作りのサラミやお惣菜が並んでいたのは言うまでもない。
パーティー開始時間は土曜日の夕方6時。イタリアの夏は日没が午後9時ぐらいととても遅いので、6時はまだまだ宵の口。夕食は出さないけど、気の利いたおつまみとビールやワインを飲んで食事前のひと時を楽しく過ごしましょう、というスタイルが「リンフレスコ」とか「アペリティーヴォ」と呼ばれ、カジュアルなパーティースタイルとしてとてもポピュラーなのだ。といっても、実はだらだらと食べ続け、お酒を飲み続け、その日はそれで夕食も兼ねておしまい、という場合がとても多い。
誕生パーティーでもそれは同じ。とはいえ、ケーキにキャンドルをともしてハッピーバースデーの歌のイタリア語版「タンティ・アグーリー・アー・テー」を合唱するのはいくつになっても忘れない。ケーキなしで年をとるなんてありえないのだ。だから何かの理由で、自宅にせよ、レストランでにせよ、誕生パーティーができない時には、イタリア人は自分でケーキを持っていってみんなにふるまい、自分の誕生日をアピールする。小学生なら学校へ、大人ならオフィスでと、誕生日はイタリア人すべてがケーキでお祝いしたいのだ。今年はあなたも、シーキューブのバースデーケーキ「フェリチタ」(幸せ、の意味)や「チェルキオ」(輪という意味)をオフィスで配って、イタリア風バースデーを広めてみませんか。
文・宮本さやか フード・ジャーナリスト/イタリア トリノ在住