最後の最後まで食事を堪能しようよ!Godiamo il pasto fino alla fine!
ミニグラスに1杯グラッパ、どう?Un bicchierino di grapp,perche’ no?
イタリアには飲み会や二次会がない代わりに、食事の前に楽しむアペリティーヴォ(食前酒と、一緒に食べるおつまみ類)の習慣があって、それって結構楽しいのである、という話を先回書いた。今回は食事の後の飲み物について書いてみようと思う。
イタリアではいわゆる食事(肉や魚料理のセコンドピアットまで)が終わると、デザートを食べるというのはみなさんご承知の通り。がっつり食べる家庭やレストランなどでは、チーズも食べることがあるが、その場合はセコンド料理の後、デザートの前、だ。
ワインに凝る人はチーズに合うワイン、デザートに合うワインをそれぞれ選び分けるのだが、どんなワインがチーズやお菓子に合うかという話はとても複雑で難しいので、ソムリエの専門家にお任せし、私はデザートを食べ、食後のお茶をいただくことにする。お茶といってもイタリアの場合は、99%ぐらいの人がエスプレッソコーヒーを飲むのだが、カフェインが苦手な人などはハーブティーなんかを頼む場合もある。
この時、日本人がちょっとだけ戸惑うのが、イタリアではデザートを食べながらお茶(コーヒーも)は飲まないということだ。日本人の私はイタリアに長く暮らしてもまだ時々、こってりと甘いケーキなんかは、苦いコーヒーを飲みながら楽しみたいと思うのだが、それはイタリアではありえない。デザートとお茶を一緒に持ってきてください、と頼めばできないこともないだろうけれど、絶対にへんな顔をされるので試しにやってみるといい。波風立てず、普通に(イタリア的に)食事をしたい人は、まずはデザートのおいしさ、甘さを心行くまで堪能したら、お皿を下げに来たサービスの人にコーヒーを頼みましょう。
さて、コーヒーを飲み、コーヒーと一緒にサービスされるプチフール(イタリア語ではピッコラ・パスティッチェリア)も好きなだけつまんだら、いよいよ食後酒の登場である。
食後酒はイタリア語でディジェスティーボと呼ばれ、消化(ディジェスティオーネDigestione)を助ける作用のある飲み物のことを指す。イタリアの典型的食後酒と言えばアマ―ロ。消化作用のあるハーブやスパイスを漬け込んだイタリア産のアルコール飲料で、アルコール度数は27度から35度ぐらいとわりと強烈。でも甘いのでついついクイッといけてしまう。ハ-ブの種類や分量など、各社工夫を凝らしているので、好みのアマ―ロを見つけたら食後のバーで頼んでみたりするとおしゃれかも。
アマ―ロが高いアルコール度数のわりには甘味やハーブの香りがして女性にも比較的飲みやすい一方、 グラッパはより男性的、といってもいいかもしれないイタリアの蒸留酒だ。消化を助けるハーブは入っていなくても、強いアルコールで消化を促すのか、食後にこれを飲む人はとても多い。ワインを作った後のブドウの搾りかすを「ランビーコ」という専用の機械にかけて蒸留するので、一般的には無色透明。でも、樫の樽で熟成させ木の香りを移した黄金色のグラッパや、ハーブなどを漬け込んだグラッパもある。アルコール度数は軒並み40から50度と強烈。でも小さなグラスに一杯、キュッといただくだけ(そうじゃない人もいるけど)なので酔っ払う心配はあまりない。
昔はグラッパというと、いろいろなブドウの搾りかすをミックスして作られるのが一般的だったようだが、最近は一種類のブドウだけを使い、その個性を前面に打ち出した「モノヴィティーニョ」(単一ブドウ)と呼ばれるグラッパ作りが人気だ。ボトルにも「バローロ」のグラッパ、「モスカート」のグラッパというふうに明記されているから選びやすい。
昔はグラッパというと、いろいろなブドウの搾りかすをミックスして作られるのが一般的だったようだが、最近は一種類のブドウだけを使い、その個性を前面に打ち出した「モノヴィティーニョ」(単一ブドウ)と呼ばれるグラッパ作りが人気だ。ボトルにも「バローロ」のグラッパ、「モスカート」のグラッパというふうに明記されているから選びやすい。
野菜や魚が中心の消化にやさしいライトな食事がほとんどで、食後酒で胃に労働を強いる必要などない私たち日本人には、食後酒という考え方や習慣がわかりにくい。でも、イタリア料理をしたたかにいただき、胃がはち切れそうにパンパンで消化運動をする余地もないような時、アルコール度数の高いアマ―ロやグラッパを一杯飲むと、胃が快適に仕事を始めてくれることに気づく。これさえあれば、また明日も元気に食べられるのだ。ついでにカロリーもカットしてくれるような食後酒があったら、もっと安心できるのだけど。
幻のグラッパ「ロマーノ・レーヴィ」。
手描きのラベルはすべて作り手であるロマーノ・レーヴィ氏によるもの。
手描きのラベルはすべて作り手であるロマーノ・レーヴィ氏によるもの。
文・宮本さやか フード・ジャーナリスト/イタリア トリノ在住