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Vol.51 おいしくて可愛いナポリのお菓子達

おいしくて可愛いナポリのお菓子達
Buonissimi e carissimi dolci napoletani



スフォリアテッラの巻
Vol.Sfogliatella


日本で本格的ナポリ風ピッツァが流行して久しいが、実はイタリアでも、ナポリ以外の土地でナポリピッツァが一般的になったのは、日本とそれほど時期が違わない。地元それぞれの味にこだわりがあり、よそのものをなかなか受け入れないイタリアが保守的なのか、世界中の料理が居ながらにして食べられる日本がすご過ぎるのか。とにかく私の暮らすトリノでも、最近はナポリ風ピッツェリアがここにも、あそこにも、というふうになっている。

というわけで今回はナポリピッツァのお話、ではなくて、ナポリピッツァの店で食べるデザートのお話です。

ナポリピッツァの店には、大抵、ナポリ風デザートがおいてある。私のお気に入りの某ナポリ風ピッツェリアのデザートメニューは、まるでナポリの伝統菓子リストのようで、見ているだけで嬉しくなってしまうラインナップだ。



第11回の「イタリアのクリスマス菓子」でもご紹介した「ストゥルフォリ」。
ラム酒がたっぷりしみ込んだ「ババ」。
でっかい揚げシュークリーム「ゼッポレ」。
レモン風味がおいしい「デリツィア・ディ・ソレント」などなど…。




でも私はいろいろ悩んだあげく、結局いつも「スフォリアテッラ」を頼む。貝の形をしたパイ生地が何十層にも細かいヒダになったその姿は可愛らしいし、噛めばパリパリと素敵な歯ごたえと、リコッタチーズをベースにした香りの高いクリームがたっぷり。私的”イタリアンスイーツ大好きベスト3”に常にランクインする、そこにあれば食べずにいられないお菓子なのである。だからナポリに行っても、ホテルの朝食から、お茶に寄ったバールでも,お菓子屋さんでも、ことあるごとにスフォリアテッラを食べまくる。







スフォリアテッラは、もともとはナポリから40キロほどの、アマルフィ海岸の修道院で1600年代に発明されたもの、ということになっている。今、アマルフィ海岸と言えばその美しい海岸線が世界遺産でもあり、おしゃれリゾートとして映画にもなっちゃう人気スポットなのだが、当時のその修道院は戒律がとても厳しく、外の人間との接触が厳しく禁じられていたそうだ。だから修道女達は暇をもてあまし(と、スフォリアテッラの歴史資料に書かれていた。修行していたんじゃないのか??)、ある時残り物の麦粥のようなものを、捨てるのはしのびないと作ってみたのがスフォリアテッラの原型だそうだ。そのお菓子はとても美味しかったので、「サンタ・ローザ」という修道院の名前で呼ばれ,近隣の人にも人気を博しましたとさ(物物交換で生計をたてていたので)。


 1800年代になって、ナポリで飯屋をやっていたピンタウロという人がなぜかこのレシピを入手し、改良を加えて現在のようなスフォリアテッラができあがったそうだ。このピンタウロさんのお菓子屋さんは今もナポリにあって(経営者はピンタウロさんの子孫ではなくなってしまったそうだが)、当時のままのレシピでスフォリアテッラを作り続けているそうだ。200年前から続くその味は古くさいなどといわれることなく、「ナポリでおいしいスフォリアテッレの店」にずっとランクインしている。


ちなみにスフォリアテッラには「リッチャ」と「フロッラ」という2つのバージョンがある。リッチャというのが私が好きな(というか、世界の多くの人が好きな)スフォリアテッラのことで、貝の形に細かくヒダになったパイが特徴。一方「フロッラ」の方は、柔らかいフロッラ生地(パート・ブリゼのような生地)にリッチャと同じリコッタチーズのクリームを詰めて菓子パンのように丸く焼いたものだ。熱いうちに食べるのが常識とかで、熱いクリームで舌を火傷しないようにしないといけない。これはナポリ意外の土地ではなかなか見かけないから、ナポリに行くことがあったらぜひ、両方食べ比べてみないとだ。




 文・宮本さやか フード・ジャーナリスト/イタリア トリノ在住