スポンジケーキ、誕生秘話
Storia nascosta della pan di spagna
ジェノヴァか、スペインか!?
Genova o Spagna!?
イタリアでは12月8日の祝日(カソリックの無原罪の御宿りの日)が クリスマスの飾り付けをする日ということになっているが、 最近はどんどん早まってきて、11月中旬には 街はすでにクリスマス気分一色の今日この頃。
日本に住んでいない私は、クリスマスというとイチゴのショートケーキがとても食べたくなる。 イタリアのクリスマスには(クリスマスじゃなくても)イチゴショートがないから、よけいに食べたくなるのだ。 ショートケーキがないかわりに、イタリア人がクリスマスに何を食べるかという話は、以前に書いた通り。
時は1700年代の中頃。当時海運国として栄えていた ジェノバ共和国(まだイタリアという国になっていない)の大使がスペインへ赴く際、 お付きの料理人や腕のいい菓子職人を従えて赴任した。 ある時非常に大切な晩餐会があったので、 大使は菓子職人、ジェノバ出身のジョヴァンニ・バッティスタ・カボーナを呼んで 「いつもと違う、すっごいお菓子を作って世界をうならせちゃおう」と 言ったかどうかは知らないが、とにかく新しいお菓子をオーダーした。 カボーナはいろいろ考えたあげく、サヴォイ・ビスケットを改良し ふわふわと大きく膨らんだケーキを作りあげた。 晩餐会で大層な評判を得たこのケーキを、 カボーナはケーキの誕生した場所を記念し 「パン・ディ・スパーニャ=スペインのパン」と呼ぶことにした。
一方スペイン宮廷では、あまりにおいしいお菓子に感動した フェルディナンドⅣ世とお付きの人々が、 こんなに素晴らしいケーキを作った菓子職人が生まれた土地、 ということで、ジェノバの名前をケーキに与えることに決めた。 以後、このケーキは世界中で「ジェノバの生地=パータ・ジェノワーズ」 として親しまれるようになったというわけだ。
時を経て、21世紀のイタリアではパン・ディ・スパーニャを どうやって食べているかというと、 代表的なのは「ズコット」といって、 スポンジとクリームをドーム型に入れて固めたケーキや 「イギリス風スープ」という意味の、トライフルのような デザート「ズッパ・イングレーゼ」だ。
その他、様々なクリームを添えたり挟んだり、 そのまま食べたり、使い方はいろいろだが、 スポンジ生地の繊細さ、おいしさを そのまま味わうというよりは、 何かのお菓子の下地、脇役的な使われ方をしてきている。
時を経て、21世紀のイタリアではパン・ディ・スパーニャを どうやって食べているかというと、 代表的なのは「ズコット」といって、 スポンジとクリームをドーム型に入れて固めたケーキや 「イギリス風スープ」という意味の、トライフルのような デザート「ズッパ・イングレーゼ」だ。
その他、様々なクリームを添えたり挟んだり、 そのまま食べたり、使い方はいろいろだが、 スポンジ生地の繊細さ、おいしさを そのまま味わうというよりは、 何かのお菓子の下地、脇役的な使われ方をしてきている。
それが最近のイタリアでは、 フレンチテイストのおしゃれで華やかな ケーキの人気が高まってきている。 ケーキ屋さんにその手のケーキが増えてきているのはもちろん、 美しい写真を多用したレシピ本や雑誌も急増中だ。
だからふわふわのイチゴショートをイタリアで堪能できる日も近いかな、 トリノのパンナはおいしいからなあ❤と 楽しみに頬が緩む今日この頃なのです。
だからふわふわのイチゴショートをイタリアで堪能できる日も近いかな、 トリノのパンナはおいしいからなあ❤と 楽しみに頬が緩む今日この頃なのです。
文・宮本さやか フード・ジャーナリスト/イタリア トリノ在住